30分延長の記事について
12月27日(水)の日経新聞に「日本取引所グループ(JPX)は27日、東京証券取引所の現物株の取引時間を30分延長する方針を発表した。令和6年度後半の実施予定で、取引終了時間を現在の午後3時から午後3時半に繰り下げる。終了時間の繰り下げは昭和29年以来、約70年ぶり。」という記事がでていました。
延長の狙いは?
令和6年となると2024年なので、今から2年ちょっと。
実は2014年にも夜間・夕方の取引を検討すべきとの話がでたのですが、この時は証券会社の猛反対を受け、取引時間延長の話は頓挫しました。
今回の30分延長の理由として、「システム障害が起きた場合でも当日中の復旧に向けた作業時間をその分長く確保することで、売買が終日停止するリスクを減らす狙いがある。」と新聞では言われております。
昨年の10月1日に東証はシステム障害で1日取引が停止しました。しかし、30分の延長で、終日停止するリスクがどの程度減るのかははなはだ疑問ではあります。
まわりの環境は?
先日のシステム障害以降、PTSを代替市場として大きくしていく必要があるような話も出てきており、現在Japannext とChi-X合わせて10%程度しかないシェアが、今後増えていく可能性もあります。また、来年度以降にはODX(大阪デジタルエクスチェンジ)なる第三のPTSも登場するとなると、いよいよ東証も競争にさらされてくる状況を考慮しておかなければならないと思われます。
先日東証から「人工市場を用いたメイカー・テイカー制が市場間取引シェア獲得に与える影響調査」なるワーキングペーパーが発表されています。現状は売買取引高に応じて、証券会社が東証に「場口銭」なる手数料を支払っていますが、今後こう言った米国式の手数料体系が取り込まれる可能性についても、今のうちから検討しておかなければならないという危機感のあらわれかも知れません。なんせ、現在の東証の売買代金の約60%が海外投資家、20%が国内個人投資家、残りが機関投資家、証券会社自己である為、やはり、東証としては海外投資家のフローはどうしても欲しいところ、国内独自の取引の仕組みを整理して、海外投資家がより参入しやすい環境を整えていきたいという事も課題としてあります。
実際のところどうなのでしょうか?
その中での30分延長。。。30分延長したからと言って、終日停止リスクにどれほど影響があるかは疑問です。また、単純にフローを取り込みたい為の延長であるならば、昼休みを無くして、昼休み中の個人のフローを取り込むなどした方が、引け後のミドル・バックの処理への影響など(基準価額の算出)を考えると、楽ではないかと考えられます。
ところが、そうではなく、終了を30分延長することを断固として行うつもりでいます。ちなみに15時30分はロンドン時間の朝6時30分。たかだ30分延長しただけでは、ヨーロッパの時間で働く投資家のフローは入りにくい。となると、今回の変更によって、フローが増える可能性は極めて低い。では、なぜそこまでして延長を進めるのか、「30分延長するという事実」が必要なのだと思います。それで、基準価額の算出などの、フローを見直す事で、将来例えば、5時間延長といった事にもスムーズに対応できる仕組みを今回の変更で作ってしまいたいという事なのだと考えられます。
今後ますますグローバル化が進むなかで、どうしてもやり遂げたい事なのではないでしょうか。